鶏が先か、卵が先か? ー融資と許認可ー

起業や新規事業参入の際には資金調達が必要になることも多いですが、資金調達の中でも一般的な方法は、銀行などから資金を借り入れる方法です。

そういった起業や新規事業を行うにあたって許可、届出、登録といった許認可が必要になる際の手続きのお手伝いというのがわたしたちの主な仕事なのですが、その際に悩ましい問題に直面することがあります。

それは「融資を受けないと事業に必要な許認可手続きができないのに、許認可を取っていないと融資が受けられない」という状況です。

具体例

わたしたちが専門にしている一般貨物自動車運送事業の許可では、その取得要件として一定以上のお金を持っていることが求められています。

例えば、トラック運送業では、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏に営業所を構える場合、多くの場合で2,500万円以上のお金が許可を取るために必要になります。

他にも一定以上のお金が要件になっている許認可はけっこう多く、そのための資金調達として融資を受けたいというご相談を受けることもあります。

金融機関の考え

一方で、お金を貸す側の金融機関は、「事業に必要な許認可を整えてからでなければ貸せません。」というのは基本的な考えです。

たしかに貸す立場からすれば、許認可が無いとやれないビジネスに対して、取れるかどうかわからない許認可を前提に融資をするというのはなかなか難しいところかもしれません。

ただ、絶対にダメかというと必ずしもそういうわけではなく、特に日本政策金融公庫では柔軟な印象がありますが、場合によっては許認可を取る前に融資を受けられることもあります。

もちろん事業計画の適切さや自己資金の額など、一般的な融資の審査基準については満たした上での話にはなりますが、一度金融機関に相談してみるのもいいのではないでしょうか。

許認可と融資ではこんなことも

本題からは少し外れるのですが、許認可が絡むビジネスをしている方が融資を受けようとするときには、他にも意外な落とし穴があったりします。

融資申し込みの際には、適法に営業していることを確認するために、有効な許認可を保有していることを証明するための営業許可証やそれに類するものの提出を求められます。

しかし、許可証をなくしてしまっていたりすると再発行してもらわなければ話が先に進まず、急いで融資を受けたいときなどには思わぬ足踏みをすることになってしまうことも。

また、再発行できればまだいいのですが、場合によっては再発行が難しいものもあります。

例えば、飲食店を深夜営業するために警察に届出をするのですが、この届出をしても証明書などが発行されるわけではなく、「受理番号」という数桁の数字が伝えられるだけです。

そうは言っても申請した書類と受理番号がわかっていれば通常は問題ないのですが、もし書類を残していなかったり紛失していたりすると、警察から受理番号は聞けても申請書類のコピーをもらうのは難しいです。

わたしたちのような行政書士が関与していれば、行政書士が控え書類を保管しますし、お客様にもお渡ししているのですが、自分で手続きをしたような場合には書類を1部だけ作って提出して手元には何も残らないということも多いので、注意しましょう。

文:泉谷守信(行政書士)

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