自動車運送事業者のための脳健診活用ガイド

運転者が自動車運転中に脳梗塞・脳出血・くも膜下出血といった脳血管疾患が起起こってしまうと、意識障害・運動麻痺などにより事故を回避するための行動をとることができなくなってしまいます。

その結果、他車(者)を巻き込んだ重大事故を引き起こす可能性が高まるのや容易に想像がつくのではないでしょうか。

脳血管疾患への対処は運転者が業務中に発症してからでは遅く、発症する前の予防・発見が重要になります。

3つの脳血管疾患とその原因

脳血管疾患の種類には、以下の3種類があります。

① 脳の血管が詰まることによって起こるもの(脳梗塞)
② 脳の血管が破れることによって起こるもの(脳出血、くも膜下出血)
③ その他の脳血管疾患

その他の脳血管疾患は、脳の血管が一時的に詰まって起こるもの(一過性虚血発作)があります。通常は短時間で症状が消えますが、この症状は脳梗塞の前触れであるといわれているため、早めの治療が重要になってきます。

脳梗塞は、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙、過度の飲酒などの生活習慣に起因する脳動脈硬化と、心房細動などの不整脈や心臓病が主な原因なります。

脳出血の主な原因は、高血圧症です。

無症状の脳梗塞・脳出血は、脳健診でのみ発見が可能です。

また、くも膜下出血の主たる原因は、脳血管に生じた脳動脈瘤の破裂ですが、発症するまで予見することはできません。唯一の予防方法は、頭部MRI・MRA検査で未破裂脳動脈瘤を発見し破裂予防措置を行うことになります。

自動車運送事業者や運行管理者は、健康起因事故を防ぐためには、脳疾患予防のために運転者の治療や生活習慣の改善を務めるよう運転者に指導することも重要ですが、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血は脳健診の受診でした発見・予防できない疾病であることの理解も大切になってくるでしょう。

このような話をしますと、自動車運送事業者や運行管理者からは、

「当社は法律で定められた頻度で健康診断を実施しているから大丈夫だよ」

と仰られる方がいらっしゃいます。

お気持ちはわかるのですが、一般的な健康診断の対象は首から下の部分の健康状態をチェックします。脳はチェックの対象から外れています。

つまり、年に1回(特定業務従事者の場合は6ヵ月に1回)の健康診断の受診だけでは、脳血管疾患を発見・予防できないのです。

脳血管疾患早期発見のために脳健診を

脳血管疾患には症状が現れないまま進行するものがあります。また、一般的な定期健康診断や人間ドックでは、脳血管の異常を発見することも困難です。

運転中に発症することを防ぐためには、自動車運送事業者が疾病の早期発見、発症の予防を可能とする脳健診の活用を検討することは、重要な脳血管疾患対策となります。

脳健診の受診を円滑に進めるためには

自動車運送事業者が脳健診受診を円滑に進めるためには、「脳血管疾患取扱規定」を定めるなどして、脳健診受診のルールを明確化した上で進めるのがよいでしょう。

これにより、運転者の不安や危惧を取り除く効果があり、さらに、脳健診を受ける目的を明確に周知することに加え、あらかじめ社内ルールを作成することにより、脳健診後のフォローや乗務可否、治療の継続的なチェックなど、一連の対応がフェアかつスムーズに進めることができるようになります。

脳健診の診断結果は自動車運送事業者が把握する必要がありますが、法定の定期健康診断結果と違い、脳健診を受診した運転者の同意が必要となります。

結果を報告することを条件とすることについて同意を得たうえで受診させてください。

その際は、報告させる目的や報告を受けた情報を共有する人の範囲、それ以外の人への漏洩防止に努めるなど情報管理を徹底することを運転者に対して十分説明するのが重要になってくると思います。

脳健診受診の優先順位

脳健診をできるだけ多くの運転者に受診して頂くのは望ましいですが、選任運転者の数が多い、受診経費が高額になってしまう、業務シフトのやり繰りが難しいなどの理由で、一度に全員を受診させることが困難で脳健診受診が進まないということはありませんか。

この場合は、脳血管疾患のリスクが高い運転者から優先して受診させるようにするのはいかがでしょうか。

まず、受診必要性が最も高い運転者は、中・高齢者です。

その中でも、脳血管疾患の家族歴・高血圧・過度の飲酒・喫煙・糖尿病・脂質異常症・肥満・メタボリックシンドロームといった危険因子に該当する運転者から優先的に受診させてください。

また、中・高齢者でなくてもこれらの危険因子に該当する運転者は受診を検討した方がよく、特に、複数の危険因子に該当する運転者や個々の危険因子の程度が高い運転者も、脳健診の受診を優先的に進めた方がよいです。

受診の頻度は、一度受診をし、その結果が正常であった場合であっても3年に1回程度を目安として再受診をした方がよいでしょう。

なお、受診対象としなかった運転者については、定期健康診断の結果などを把握して、脳健診受診対象とすべき危険因子に該当していないかの確認を毎年行ってください。

脳健診を受診させる運転者が決まったら検査の予約を進めましょう。

脳健診では、頭部MRI、頭部MRA検査を行いますが、この検査を行えるMRI検査装置はどこのクリニックにもある検査装置ではありません。

産業医がいる自動者運送事業者は産業医に、産業医がいない自動者運送事業者は定期健康診断を依頼しているクリニックに、まずは脳健診が受診できるクリニックについて相談してみましょう。

【PR】「スマート脳ドック」活用のご提案

当法人では、脳健診は「スマート脳ドック」をおすすめしています。もし、御社に脳健診を受診できる施設のあてがない場合は、「スマート脳ドック」のご利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

「スマート脳ドック」は、頭部MRI / MRA / 頸部MRAによって、脳の状態を詳細に検査することができます脳健診です。発症している脳疾患の有無はもちろん、 病気につながる脳の異常箇所を調べる検査になります。

私どもが「スマート脳ドック」を推薦する理由は、本脳健診は、業務時間への影響を軽減できる脳健診だと考えるからです。ネットで検査日の予約や予約日の変更ができる上、受付から帰るまでの所要時間は30分です。土日受診可能な施設や当日予約可能な施設もあるため、勤務時間が不規則になりがちな運転者の働き方にマッチした脳健診と言えるでしょう。

私が代表を務めており、当法人が加盟している一般社団法人運輸安全総研トラバスでは、「スマート脳ドック」を提供しているスマートスキャン社と業務提携しております。脳ドックを推奨する理由や、「スマート脳ドック」の特徴が簡潔にまとめられているパンフレットがありますので、ぜひご覧ください。

(2023.08)スマート脳ドックご案内(PDFファイル)

※検査申込時にクーポンコード(trubus1000)をご利用いただくことにより、特別価格で脳健診を受診することが可能になりました。

終わりに

脳健診を活用することで、自動車運送業界において「安全と健康」が継続的に向上していくことを願っております。

文:阪本浩毅(行政書士法人シグマ 代表行政書士/一般社団法人運輸安全総研トラバス 代表理事)

業務に関するご相談やご依頼はこちら

ページトップへ戻る