旅行会社が「白タク」を斡旋手配した場合のペナルティ

※本記事は、2024年1月4日時点の情報にて執筆しております。

訪日旅行客の急増の裏で、一部のオンライン旅行会社(OTA)がいわゆる「白タク」の手配斡旋していることが問題になりました。

観光庁、「白タク」手配斡旋の悪質な旅行会社を公表へ – Traicy

道路運送法では、他人の需要に応じて、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業は旅客自動車運送事業に該当します。旅客自動車運送事業を経営する者は、国土交通大臣の許可が必要になります。

国土交通大臣の許可を得ている場合は、旅客自動車運送に使用する車両は緑色の事業用ナンバーが付いています。

※道路運送法第78条に規定されている自家用有償旅客運送制度がありますが、本記事では、有償運送は旅客自動車運送事業に限定しています。

一方で、「白タク」に使用されている車両は自家用ナンバーが付いています。軽乗用車はナンバープレートの色は黄色ですが、普通乗用車・小型乗用車は白色のナンバーが付いているため、国土交通省の許可を得ないで、自家用車で旅客運送業を「白タク」と一般的に呼ぶことになりました。

「白タク」は無許可営業になるため違法行為です。「白タク」行為を行うと道路運送法違反となり、同法に規定された罰則に処せられます。

旅行会社が「白タク」行為を行ったり、「白タク」を斡旋手配した場合は、道路運送法違反であるのみではなく、旅行業法にも抵触することになります。

旅行会社が「白タク」を斡旋手配した場合、旅行業法第13条第3項2号の規定されている、法令に違反するサービスの提供に該当します。

(禁止行為)
第十三条 旅行業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 第十二条第一項又は第三項の規定により掲示した料金を超えて料金を収受する行為
二 旅行業務に関し取引をする者に対し、その取引に関する重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
2 旅行業者等は、旅行業務に関し取引をした者に対し、その取引によつて生じた債務の履行を不当に遅延する行為をしてはならない。
3 旅行業者等又はその代理人、使用人その他の従業者は、その取り扱う旅行業務に関連して次に掲げる行為を行つてはならない。
一 旅行者に対し、旅行地において施行されている法令に違反する行為を行うことをあつせんし、又はその行為を行うことに関し便宜を供与すること。
二 旅行者に対し、旅行地において施行されている法令に違反するサービスの提供を受けることをあつせんし、又はその提供を受けることに関し便宜を供与すること。
三 前二号のあつせん又は便宜の供与を行う旨の広告をし、又はこれに類する広告をすること。
四 前三号に掲げるもののほか、旅行者の保護に欠け、又は旅行業の信用を失墜させるものとして国土交通省令で定める行為

旅行業法第13条に規定されている禁止行為を行った場合は、旅行業法第19条1項の規定に基づいて行政処分の対象になります。

(登録の取消し等)
第十九条 観光庁長官は、旅行業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は登録を取り消すことができる。
一 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
二 第六条第一項第二号、第三号若しくは第五号から第八号までのいずれかに掲げる者に該当することとなつたとき、又は登録当時同項各号のいずれかに掲げる者に該当していたことが判明したとき。
三 不正の手段により第三条の登録、第六条の三第一項の有効期間の更新の登録又は第六条の四第一項の変更登録を受けたとき。
2 観光庁長官は、旅行業者等が登録を受けてから一年以内に事業を開始せず、又は引き続き一年以上事業を行つていないと認めるときは、登録を取り消すことができる。
3 第六条第二項の規定は前二項の規定による処分について、前条第二項から第四項までの規定は第一項の規定による処分について、それぞれ準用する。

「白タク」を斡旋手配した場合の行政処分は、観光庁通達である『旅行業法第19条第1項に基づく旅行業者の不利益処分の基準』に記載されています。

観光庁通達に拠ると、「白タク」を斡旋手配した場合の行政処分は、18日間の業務停止となっています。

行政指導が前置されている違反行為に対しては、まずは行政指導が行われ、それでも是正されない場合には業務停止処分が科されます。

「白タク」を斡旋手配した違反には行政指導が前置されていませんので、業務停止の行政処分が一発で科されることになります。

「白タク」は、輸送の安全の確保の観点から問題になります。

旅客自動車運送事業が許可制になっているのは、輸送の安全の確保するためです。許可とは、一般に禁止されている行為を特定の場合に解除し、適法に特定の行為をなすことを許すことです。

旅客運送事業では、輸送の安全を確保するために、様々な規制が敷かれています。たとえば、乗務前・乗務後のアルコール検知器を使用した点呼に執行、乗務員教育や適性診断の実施、自家用車よりも厳しい定期点検整備の実施などです。法令に遵守した運行を行っているかを確認するために、国土交通省は、旅客運送事業者に対して監査も行っています。

「白タク」での旅客運送は、国土交通省より許可を受けている緑ナンバーを使った旅客運送と比較すると、輸送の安全性は著しく劣っているといえるでしょう。

オンライン旅行会社(OTA)はプラットフォーマーであるため、旅行者と運送機関を斡旋するだけで、個別取引については、「知らぬ存ぜぬ」の対応を取る向きがありますが、少なくとも旅行業法の規制を受ける国内の旅行会社は、「白タク」の手配斡旋は、旅行業法違反となり、業務停止という行政処分を受けることがご理解いただけたのではないでしょうか。

旅行者に対して旅客送迎サービスの手配斡旋を行われている旅行会社は、契約先の旅客自動車運送事業者が、「白タク」行為を行っていないかの確認もあわせて行う必要があるでしょう。

※本記事は、2024年1月4日時点の情報にて執筆しております。

文責:行政書士 阪本浩毅

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