一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)を始めるには

バスやタクシーなどの自動車を使用して、有償で、人を運送するのが旅客自動車運送事業です。

一般貸切旅客自動車運送事業

旅客自動車運送事業のうち、乗車定員が11人以上の自動車を使用して旅客を運送する事業のことを、貸切バス事業、正式には「一般貸切旅客自動車運送事業」といいます。

旅行会社などが集めた旅行者の団体を運送するバスをイメージしてください。一個の団体等と運送の契約を結んで、車両を貸切って運送する旅客自動車運送事業のことを指します。

一般貸切旅客と一般乗用旅客

なお、ハイヤー・タクシー事業は、乗車定員が10人以下の自動車を使用して旅客を運送する事業は、正式には「一般乗用旅客自動車運送事業」といいます。運送形態は貸切バス事業と一緒ですが、使用車両の乗車定員が異なるため、貸切バス事業とは別の旅客自動車運送事業になります。

一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス事業)の開業

貸切バス事業をはじめるには、地方運輸局長の許可を受けることが必要です。

その許可を受けるためには、まずは、営業所を管轄する運輸支局へ経営許可申請書を提出します。そして、運輸支局の窓口で申請書が受理されると、運輸局において審査されます。

審査の結果、申請内容が各地方運輸局の定めた許可の基準(要件)に合致していることが確認されれば、貸切バス事業の許可を取得することができます。

白ナンバーバスでの営業行為は法律で禁止されています

もし、許可を受けないで貸切バス事業を行った場合、罰則等を受けることになります。

  • 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金
  • 6月以内の期間を定めて自家用自動車の使用を制限又は禁止
  • 事業の停止処分

一般貸切旅客自動車運送事業の営業開始までの流れ

1.申請準備

  • 営業所、休憩睡眠施設、車庫の選定・契約
  • 事業用自動車の選定・契約
  • 安全統括管理者、運行管理者、整備管理者、運転者の人選
  • 自己資金の確保
  • 安全投資計画と事業収支見積書の策定
  • 直近1事業年度分の財務状況の確認 など

2.経営許可申請書の作成

3.経営許可申請書の提出(営業所を管轄する運輸支局へ)

4.法令試験の受験

試験は毎月1回実施され、試験の受験者は代表取締役などの代表権を有する常勤役員に限定されます。

再試験は1回までとなっており、再試験が不合格の場合は経営許可申請の取下げを行うか、取下げない場合は運輸局が経営許可申請の却下処分となります。

5.(法令試験合格後)書類審査

6.許可取得

貸切バス事業の許可を取得したのみでは、事業を開始することができません。

※事業開始までの詳しい手続きは後述の許可取得後の手続きをご覧ください。

許可取得までの期間は?

運輸支局が申請書類を受理してから許可が下りるまでの標準的な期間は3か月(関東運輸局管内の場合)と定められていますが、提出の書類の修正・再提出に時間を要する場合や、役員法令試験に1回で合格できない場合は、許可が下りまでの期間が3か月以上になる場合が考えられます。

申請の準備の段階では、営業所・休憩睡眠施設・自動車車庫の立地調査や測量が必要になり、さらに、多くの書類を準備する必要があります。従って、許可を取得するためには、事前準備期間に1か月、審査期間に3か月の4か月は最低限必要な期間だと思われます。

一般貸切旅客自動車運送事業の許可要件(基準)は?

貸切バス事業の営業許可を取得し、その許可を維持するためには、以下の要件を満たしていなければなりません。

  1. 営業区域
  2. 営業所
  3. 自動車車庫
  4. 休憩、仮眠又は睡眠のための施設
  5. 事業用自動車(バス)
  6. 運転者
  7. 資金計画
  8. 管理運営体制
  9. 法令遵守体制
  10. 損害賠償能力
  11. 安全投資計画と事業収支見積書

以下で、より詳しく説明いたします。

1.営業区域

貸切バス事業の営業区域は、原則、営業所のある都道府県単位になります。東京都内に営業所がある貸切バス事業者は東京都が、横浜市内に営業所がある貸切バス事業者は神奈川県が営業区域になります。

ただし、都県の境界に接する市町村(東京都特別区又は政令指定都市に接する場合にあっては隣接する区)に営業所を置く場合は、山岳、河川、海峡等地形・地勢的要因に隔たりがなく、経済事情等により同一地域と認められる場合は、営業所のある都道府県に加えて、隣接する市町村(東京都特別区又は政令指定都市に接する場合にあっては隣接する区)を営業区域とすることができます。

2.営業所

営業所は、貸切バス事業を行うにあたり、運行管理・整備管理を行うなど実務上の拠点となる場所です。営業所は営業区域内にあることが求められ、複数の営業区域を有する場合は、それぞれの営業区域内に営業所があることが求められます。

土地・建物について3年以上の使用権限があること。ただし、賃貸借契約の期間が3年未満であっても、契約期間満了時に自動的に賃貸借契約が更新される場合は、使用権限があるとみなされます

  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していないこと
  • 事業計画を的確に遂行するための規模があり、適切な運行管理が行える位置にあること

3.自動車車庫

  • 原則、営業所に併設されていること
  • 営業所に併設できない場合は、営業所から直線距離で2㎞の範囲内にあり、運行管理をはじめとする管理が十分可能な位置にあること
  • 営業所に配置する事業用自動車の全てを収容できること
  • 車両と自動車車庫の境界までの間隔が50㎝以上確保されていること
  • 車両と車両の間隔が50㎝以上確保されていること
  • 自動車車庫以外の用途に使用される部分と明確に区画されていること
  • 土地・建物について3年以上の使用権限があること。ただし、賃貸借契約の期間が3年未満であっても、契約期間満了時に自動的に賃貸借契約が更新される場合は、使用権限があるとみなされます
  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していないこと
  • 事業用自動車が車庫の出入り支障がなく、車庫前面道路が車両制限令に抵触していないこと

以上が求められます。

前面道路とその道路を通行できる車両幅の関係で主要なものは次のとおりです。

1.市街地区域の道路の場合

(道路幅員-0.5) ÷ 2 = その道路を通行できる車両幅

2.市街地区域で駅前・繁華街・歩行者が多い道路の場合

(道路幅員-1.5) ÷ 2 = その道路を通行できる車両幅

3.市街地区域外の道路の場合

道路幅員 ÷ 2 = その道路を通行できる車両幅

  • 事業用自動車の点検・清掃・調整が実施できる充分な広さがあり、必要な点検等ができる測定用器具等が備えられていること

貸切バス事業の車庫に備え付ける測定用具等とは、以下の器具・工具です。

測定用器具 イ 物さし又は巻尺

ロ タイヤ・ゲージ

ハ タイヤ・デプス・ゲージ

ニ (蓄電池の充放電の測定具)

作業用器具・工具 イ ジャッキ又はリフト

ロ 注油器

ハ ホイール・ナット・レンチ

ニ 輪止め

ホ (タイヤの空気充てん具)

へ (グリース・ガン)

ト (点検灯)

チ (トルク・レンチ)

手工具 イ 両口スパナ

ロ ソケット・レンチ

ハ プラグ・レンチ ※ジーゼル自動車のみの車庫には不要

ニ モンキー・レンチ

ホ プライヤ

ヘ ペンチ

ト ねじ回し

チ (ハンド・ハンマ)

リ (点検用ハンマ)

4.休憩、仮眠又は睡眠のための施設

  • 原則、営業所又は自動車車庫に併設されていること
  • 営業所・自動車車庫に併設できない場合は、営業所及び自動車車庫のいずれからも直線距離で2㎞以内の範囲内であること
  • 土地・建物について3年以上の使用権限があること。ただし、賃貸借契約の期間が3年未満であっても、契約期間満了時に自動的に賃貸借契約が更新される場合は、使用権限があるとみなされます
  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していないこと

5.事業用自動車(バス)

貸切バス事業で使用する事業用自動車は、乗車定員が11名以上の車両であることが求められています。また、車両の長さや旅客席数によって、大型車・中型車・小型車の3区分に分かれています。

大型車:車両の長さ9m以上、または旅客席数50人以上

中型車:大型車・小型車以外のもの

小型車:車両の長さが7m以下で、かつ旅客席数29人以下

  • 小型車・中型車だけを使用する場合は、営業区域ごとに3台以上の車両が必要です
  • 大型車だけを使用する場合は、営業区域ごとに5台以上の車両が必要です。
  • 貸切バス事業者が使用権限を有していること。リース車両の場合は、リース契約期間が概ね1年以上であることが求められます。

6.運転者

  • 二種免許を保有している運転者を車両台数以上確保していること。
  • 以下の運転者は、貸切バス事業の運転者に選任することはできません。
  1. 日日雇い入れられる方
  2. 二月以内の期間を定めて使用される方
  3. 試みの使用期間中の方(十四日を超えて引き続き使用されるに至った方を除く。)
  4. 14日未満の期間ごとに賃金の支払い(仮払い、前貸しその他の方法による金銭の授受であって実質的に賃金の支払いと認められる行為を含む。)を受ける方

7.管理運営体制

  • 役員のうち1名以上が貸切バス事業に専従すること。
  • 運行管理を担当する役員が定められているなど、運行管理の指揮命令系統が明確である
  • 安全管理規定を定めて、安全統括管理責任者を選任する計画があること
  • 営業所ごとに、配置する車両に対応する常勤の有資格の運行管理者をできること
  • 営業所ごとに、常勤の整備管理者の選任する計画があること
  • 自動車車庫を営業所に併設できない場合は、自動車車庫と営業所に連絡網が規定されているなど、常時密接な連絡をとれる体制が確立されていること
  • 事故防止等についての教育及び指導体制を整え、かつ、事故の処理及び自動車事故報告規則に基づく報告等の責任体制その他の緊急時の連絡体制及び協力体制について明確に整備されていること
  • 運行管理規定が定められていること
  • 利用者等からの苦情処理に関する体制が整備されていること

8.資金計画

貸切バス事業許可取得時に申請者の方が頭をかかえてしまうのが、この資金計画です。

所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金が確保されていなければなりません。この自己資金は申請日時点のみ要件を満たしているだけでは足りません。

申請日から許可取得までの間、資金計画を満たしていなければなりません。つまり、運輸局が審査期間中は、自己資金は『寝かす』ことになってしまいます。これは許認可要件上、止む得ないことです。

所要資金額 事業開始当初に要する資金
車両費 リース車両:リース料(1年分)

新たに車両購入:取得税・消費税を含んだ取得価額全額

自己所有:割賦残額などの未払い金

リース車両:リース料(6か月分)

割賦購入:頭金+割賦金(6か月分)

一括払い:取得税・消費税を含んだ取得価額全額

土地費 賃貸物件:敷金等+地代(1年分)

自己所有物件:取得価格全額/td>

賃貸物件:敷金等+地代(6か月分)

分割払いの自己所有物件:頭金+割賦金(6か月分)

一括払いの自己所有物件:取得価格全額

建物費 賃貸物件:敷金等+家賃(1年分)

自己所有物件:取得価格全額

賃貸物件:敷金等+家賃(6か月分)

分割払いの自己所有物件:頭金+割賦金(6か月分)

一括払いの自己所有物件:取得価格全額

機械器具及び什器備品費

(車庫に備え付ける工具、営業所の机等の購入費)

取得価額全額 取得価額全額

※所要資金額と同額になります

運転資金

(人件費、燃料油脂費、修繕費など)

2か月分 2か月分

※所要資金額と同額になります

保険料や各種税金

(自賠責保険料、任意保険料、自動車重量税、自動車税、自動車取得税、登録免許税)

自賠責保険料、任意保険料、自動車重量税、自動車税(1年分)

自動車取得税の全額

登録免許税(9万円)

自賠責保険料、任意保険料、自動車重量税、自動車税(1年分)

自動車取得税の全額

登録免許税(9万円)

※所要資金額と同額になります

創業費

(運輸開始までの従業員の給料、宣伝費、帳票類購入費、看板代、運転手適正診断受診料、バス協会入会金、制服日、応急手当用の薬品購入費、その他の雑費)

全額 全額

※所要資金額と同額になります

運輸局に対してどのようにして自己資金額のあることを立証するのでしょうか。立証方法は、銀行が発行する預金の残高証明書を用います。

自己資金は預貯金が原則ですが、預貯金以外の流動資産を含めることもできます。

どのような流動資産が自己資金に含められるかどうかは、運輸局に個別に判断することになりますので、流動資産を自己資金に含めて申請を検討されている方は、運輸局との事前調整が重要になってくるでしょう。

9.法令遵守体制

  • 申請者が法人である場合、その法人の代表権を有する常勤の役員(代表取締役)が一般貸切バス事業を適正に遂行するために必要な法令の知識を有していなければなりません。

この要件を満たしているかどうかを確認するために、申請書提出後に法令試験が実施されます。

法令試験について

この法令試験は原則毎月1回実施されています。実施日時や実施場所は、実施予定日の7日前までに、運輸局より通知されます。出題範囲は、以下の範囲です。

出典:平成25年10月31日付公示「一般貸切旅客自動車運送事業の許可等の申請に係る法令試験の実施について」

正誤式、語群選択式、記述式の設問が40問以内の範囲で出題されます。試験時に書籍等を持ち込むことはできますが、「自動車六法」、「旅客自動車運送事業等通達集」、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン」「旅客自動車運送事業運輸規則第47条の7第1項の規定に基づき、旅客自動車運送事業者が公表すべき輸送の安全に係る事項(国土交通省告示第1089号)」の5つに限定されています。

役員法令試験は、正解率が90%以上で合格となり、不合格の場合は、1回に限り再試験を受けることができます。2回の試験で合格しないと、貸切バス事業の許可を取得することができないのです。

社会保険加入や役員の欠格要件

  • 社会保険に加入しているか又は加入する計画があることが求められます。

法人の役員が、以下の欠格事由に該当していないこと

一  許可を受けようとする者が一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過していない者であるとき。
二  許可を受けようとする者が一般旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業の許可の取消しを受け、取消しの日から二年を経過していない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しを受けた法人のその処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。第四号、第四十九条第二項第四号並びに第七十九条の四第一項第二号及び第四号において同じ。)として在任した者で当該取消しの日から二年を経過していないものを含む。)であるとき。
三  許可を受けようとする者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合において、その法定代理人が前二号又は次号のいずれかに該当する者であるとき。
四  許可を受けようとする者が法人である場合において、その法人の役員が前三号のいずれかに該当する者であるとき。

法令遵守

申請者が法人である場合は、法人の業務を執行する常勤の役員が次のすべてに該当する等、法令順守の点で問題ないことも求められます。

一 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前3ヶ月間及び申請日以降に50日車以下の輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む。)ではないこと。
二 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前6ヶ月間及び申請日以降に50日車を超え190日車以下の輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む。)ではないこと。
三 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前1年間及び申請日以降に190日車を超える輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む。)ではないこと。
四 申請日前2年間に、道路運送法第40条の規定による許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分をする日までの間に法第38条 第1項の規定に基づく一般貸切旅客自動車運送事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃 止をした者が法人である場合における当該処分を行う原因となった事項が発生した当時現 にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む。)ではないこと。

10.損害賠償能力

  • 計画車両の全てが国土交通省告示に適合する任意保険に加入する計画があることが求められます。

国土交通省告示に定められている契約内容は対人無制限、対物200万円以上、免責額30万円以下であることが求められます。

11.安全投資計画と事業収支見積書

許可を受けようとする日を含む事業年度開始日から、最初の許可の有効期間満了日までの事業年度までの期間について、それぞれの事業年度ごとに、輸送の安全を確保しつつ事業を的確に遂行するために必要な投資が適切になされている計画となっていることが求められます。この計画のことを、安全投資計画と呼びます。

安全投資計画には、下記の10項目についての計画を記載します。

  • 更新までの期間における事業の展望
  • 更新までの期間に実施する事業及び安全投資の概要
  • 運転者、運行管理者、整備管理者の確保予定人数
  • 車両取得予定台数及び保有台数
  • 車両の点検及び整備に関する計画
  • ドライブレコーダーの導入計画
  • 初任運転者及び高齢運転者に対する適正診断の受診計画
  • 日本バス協会が実施する貸切バス事業者安全性評価認定申請計画
  • 認定事業者による運輸安全マネジメント評価受診計画
  • その他安全の確保に対する投資計画

また、策定した安全投資計画に従って貸切バス事業者が事業を遂行することについて経理的基礎が有していることが求められます。つまに、安全投資計画が絵に描いた餅ではなく、実効性が財務的に裏付けされていることまで求められています。

事業収支見積書には、下記の金額を記載します。

  • 営業収益
  • 運転者、運行管理者、整備管理者の人件費
  • リース料、減価償却費、修繕費、ドライブレコーダー導入費用などの車両に関する費用
  • 運転者の適正診断受診に関する費用
  • 貸切バス事業者安全性評価認定申請に関する費用
  • 運輸安全マネジメント評価受診に関する費用
  • その他安全確保に対する投資費用
  • 貸切バス適正化センターへ納付する負担金の額
  • 営業外収益
  • 営業外費用
  • 他事業からの繰入

事業収支見積書と安全投資計画は整合性がとれており、見積書に記載した単価については、所要の単価を下回っていないことが求められております。

さらに、事業収支見積書について計画期間中毎年連続赤字であることは認められず、さらに、許可を申請する年の直近1事業年度が、申請会社の財務状況が債務超過でないこともあわせて求められます。

必要書類について

貸切バス事業の許可要件の調整が完了したら、必要書類を準備して申請の準備を行いましょう。既に設立している法人で申請を行う場合は、以下の書類が必要です。

経営許可申請書の鑑(かがみ)
事業計画 ※申請書の別紙
所要資金及び事業開始に要する資金の内訳
車両費・土地費・建物費・機械器具及び什器備品費の明細
車両明細一覧表
事業用自動車の使用権限を証する書面
・自己所有:車検証の写し、残債がある場合は支払いについての支払明細書
・リース:車検証の写し、リース契約書
・購入:車検証の写し、売買契約書の写し、分割払いの場合は割賦支払明細書
運転資金・保険料・その他創業費等の明細
残高証明書の原本
休憩睡眠施設の概要を記載した書面
営業所、自動車車庫、休憩睡眠施設の案内図、平面求積図、配置図
営業所、自動車車庫、休憩睡眠施設の使用権限を証する書面
・自己所有:不動産登記簿謄本
・賃貸物件:賃貸借契約書の写し
建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していない旨の宣誓書
車庫前前面道路の道路幅員証明書
定款
履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
直近の事業年度の貸借対照表
役員名簿
役員の履歴書
申請者・常勤役員の欠格事由に該当しない旨、行政処分を受けていない旨の宣誓書
管理運営体制の組織図
安全統括管理者の就任承諾書
運行管理者資格者証
運行管理者の就任承諾書
整備管理者の資格者証又管理者手帳(資格要件が実務経験の場合は、実務経験証明書と選任前研修修了証明書の写し)
整備管理者の就任承諾書
運転者予定名簿
運転免許証の写し
運転者の就任承諾書
法令の基準に適合する任意保険や共済に加入する旨の宣誓書
(健康保険・厚生年金保険)新規適用届出の写し、労災保険・保険関係成立届出の写し(許可取得後に社会保険へ加入する場合は、宣誓書)
安全投資計画
整備サイクル表
事業収支見積書
健康診断費用の見積書
車両のリース契約書(リース契約の内容によって、車両整備費用の見積書が別途必要)
その他安全の確保のための投資費用が記載されている見積書
直近1事業年度分の貸借対照表と損益計算書

※上記の書類は最低限の提出書類であり、事業計画の内容により追加書類の提出が求められる場合があります。

許可取得後、営業開始までの手続きは?

運輸局の審査を経て、一般貸切旅客自動車運送事業の許可証を受領しただけでは、お客様を乗せて旅客運送事業を行うことはできません。

許可取得後に運輸支局等の行政機関へ届出を行うことや、事業施設の整備、帳票類の整備、事業用ナンバー(いわゆる緑ナンバー)の取得等の手続きを経て、事業を開始することができるのです。

許可書受領から運輸開始までの手続き

運輸局関係での手続き 社内での運行準備
1.許可証受領

2.登録免許税(9万円)の納付

3.運賃届出

4.約款の認可申請(一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款を適用する場合は不要)

5.安全統括管理者選任届の提出

6.安全管理規定設定届の提出

7.運行管理者・整備管理者選任届の提出

8.事業用自動車連絡書の取得

9.事業用ナンバーの取得

運輸開始(許可取得後から6か月以内)

10.運輸開始届出の提出(運輸開始後速やかに)

・営業所、自動車車庫、休憩睡眠施設の整備

・事業用車両の確保

・点呼記録簿などの帳票類の整備

・運賃料金、運送約款、看板の掲示

・安全管理規定、運行管理規定、整備管理規定の整備

・就業規則、36協定の作成・届出

・労働保険、社会保険の加入手続き

・運転者適正診断の受診

・健康診断の受診

・新任運転者への指導教育の実施

・任意保険への加入

許可取得から運輸開始までの期間は?

運輸開始は、一般貸切旅客自動車運送事業の許可取得後から6か月以内に行わなければなりません。

許可取得後も様々な運輸局への手続きや社内準備を行わなければなりませんので、運輸局が審査を行っている段階から許可後の運輸開始に向けて、徐々に準備を進めておくとスムーズに運輸開始を行うことができるでしょう。

運輸を開始したら運輸開始届を提出

貸切バス事業の運輸開始を行ったら、運輸開始後速やかに運輸開始届を提出します。提出先は、営業所を管轄する運輸支局です。

運輸開始届には、許可取得後に社内での運行準備を行った際の裏付け書類の提出が求められます。具体的には、次の書類です(関東運輸局管内の貸切バス事業者の場合)。

事業用自動車の車検証 ※写し
自動車任意保険証書 ※写し
営業所、自動車車庫、車両の写真
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 ※写し
労働保険 保険関係成立届 ※写し
雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)※写し
又は労働契約書 ※写し(運転者、運行管理者)

一般貸切旅客自動車運送事業者の事業報告義務

貸切バス事業者は、運輸開始後、毎年を定められた時期に事業報告書と輸送実績報告書の2つの報告書を提出する義務が課されています。

これらの報告書の提出を怠った場合や虚偽の報告を行った場合は、道路運送法違反により100万円の罰金が科されます。

さらに、報告書を所定の期限まで提出しなかったり、虚偽の内容を記載した報告書を提出したり、報告書に記載された内容に法令違反の疑いがある貸切バス事業者は、運輸局の監査対象事業者になってしまいます。

1.事業報告書

貸切バス事業者は、毎事業年度の経過後100日以内に、その事業年度に関する事業報告書を所轄の運輸支局へ提出する必要があります

。提出書類は、事業概況報告書、一般貸切旅客自動車運送事業損益明細表、一般貸切旅客自動車運送事業人件費明細表、損益計算書、貸借対照表の5種類です。損益明細書と貸借対照表は、様式は特に決まっておりませんので、税務署に提出した自社の様式のものを提出すれば足ります。

2.輸送実績報告書

貸切バス事業者は、輸送実績報告書も提出する必要があります。輸送実績報告書は、毎年4月1日から3月31日までの期間に係る事業用車両数、従業員数、輸送実績、事故件数を毎年5月31日までに管轄の運輸支局へ提出します。

事業報告書・事業実績報告書を提出しないと監査対象に

2つの報告書を所定の期限まで提出しなかったり、虚偽の内容を記載した報告書を提出したり、報告書に記載された内容に法令違反の疑いがある貸切バス事業者は、運輸局の監査対象事業者になってしまいます。ですので、正しい報告書を提出期限までに提出しましょう。

また、報告書未提出とは別の理由で運輸局の監査が行われた場合、報告書の未提出が監査で指摘されてしまうと、報告義務違反として行政処分を受けることになってしまいます。

自動車事故の報告

貸切バス事業者は、自動車事故報告規則に定める事故があった場合、事故発生から30日以内に、自動車事故報告書を提出しなければなりません。

この事故報告書の提出窓口は、事故を起こした車両の試用の本拠の位置を管轄する運輸支局となります。

事故報告が必要な事故の種類
1 自動車が転覆し、転落し、火災(積載物品の火災を含む。) を起こし、又は鉄道車両(軌道車両を含む。)と衝突し、若しくは接触したもの
2 10台以上の自動車の衝突又は接触を生じたもの
3 死者又は重傷者を生じたもの
4 10人以上の負傷者を生じたもの
5 自動車に積載された危険物等の全部若しくは一部が飛散し、又は漏えいしたもの
6 自動車に積載されたコンテナが落下したもの
7 操縦装置又は乗降口の扉を開閉する操作装置の不適切な操作により、旅客に自動車損害賠償保障法施行令第5条第4に掲げる傷害が生じたもの
8 酒気帯び運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転又は麻薬等運転を伴うもの
9 運転者の疾病により、事業用自動車の運転を継続することができなくなったもの
10 救護義務違反があったもの
11 自動車の装置の故障により、自動車が運行できなくなったもの
12 車輪の脱落、被牽引自動車の分離を生じたもの(故障によるものに限る。)
13 橋脚、架線その他の鉄道施設を損傷し、三時間以上本線において鉄道車両((軌道車両を含む。)の運転を休止させたもの
14 高速自動車国道又は自動車専用道路において、3時間以上自動車の通行を禁止させたもの
15 1から14までに掲げるもののほか、自動車事故の発生の防止を図るために国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示したもの

自動車事故の速報

速報対象となる重大事故が発生した場合には、事故発生から24時間以内において可能な限り速やかに管轄の運輸支局へ速報しなければなりません。

なお、事故に関して、報道機関による報道又はそのための取材があった場合及び社会的影響が大きいと認められる場合については、速報対象の事故になっていない場合でも、速報するよう努めなければならないこととされています。

速報対象となる重大事故
1 自動車が転覆し、転落し、火災(積載物品の火災を含む。)を起こし、又は鉄道車両(軌道車両を含む。)と衝突し、若しくは接触したもの(旅客自動車運送事業者が使用する自動車が引き起こしたものに限る。)
2 1人以上の死者を生じたもの
3 5人以上の重傷者を生じたもの
4 旅客に1人以上の重傷者を生じたもの
5 10人以上の負傷者を生じたもの
6 自動車に積載された危険物等の全部若しくは一部が飛散し、又は漏えいしたもの(自動車が転覆し、転落し、火災を起こし、又は鉄道車両、自動車その他の物件と衝突し、若しくは接触したことにより生じたものに限る。)
7 酒気帯び運転を伴うもの
8 脳疾患、心臓疾患及び意識喪失に起因すると思われる事故が発生した場合
9 前各号に掲げるもののほか、自動車事故の発生の防止を図るために国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示したもの

運輸開始後の変更手続き

貸切バス事業の運輸開始後に、運行管理者や整備管理者を変更した場合や、営業所の移転や車庫の増設、バスの増車などの事業計画の変更を行う場合は、運輸局への手続きが必要になります。

変更手続きによって、事前手続きが必要なものと事後手続きが必要なものに分かれています。

当法人にご相談頂く主要な変更手続きを、手続きの時期に分類すると次のようになります。

提出時期 認可/届出 変更内容
事前 認可 営業区域の変更

営業所の新設、位置の変更

車庫の位置、収容能力の変更

事業の譲渡及び譲受

届出 事業用自動車の増車・減車

運賃・料金

事後 届出 主たる事務所の名称、位置の変更

営業所の名称変更

休憩仮眠睡眠施設の位置、規模の変更

役員の変更

事業の廃止

安全統括管理者の選任、解任

運行管理者の選任、解任

整備管理者の選任、解任

※事前手続きのうち、認可申請が必要なものは、審査期間として2か月を要する手続きのため、事業計画変更認可申請書を提出後、すぐに変更が行えるものではありません。

また、使用するバスの増車・減車の申請は、変更予定日の7日前までに営業所を管轄する運輸支局へ事業計画の変更届出書を提出する必要があります。

行政書士に依頼する場合の費用(目安)

行政書士法人シグマへ貸切バス事業に関する許認可法務をご依頼頂いた場合の費用は以下のとおりです。

業務 報酬額
(税込・実費別)
登録免許税 期間目安
新規許可申請サポート
(経営許可申請)
110万円~ 9万円 5か月~
営業区域変更・
営業所新設申請サポート
(事業計画変更認可申請)
個別見積 3万円

※同一運輸局管内での営業区域拡大の場合は非課税

4か月~
更新許可申請サポート 110万円~ 0円
運行管理者・整備管理者
変更手続きサポート
33,000円~ 2週間~
事業報告書の
作成・提出代行
44,000円~ 3週間~
事業実績報告書の
作成・提出代行
33,000円~ 1か月~
法令遵守状況チェック
(顧問業務)※
11万円~
月に1回営業所へ訪問し、帳票類の記録・保管状況や点呼実施状況の確認することで、法令順守体制づくりのお手伝いを致します。ご提供するサービスの詳細や費用はお問い合わせください。事業者さんのお悩みにあわせたサービス内容をご提案いたします。

※貸切バス・都市型ハイヤーといった旅客自動車運送事業の許可取得手続きに関するご相談は、有料相談業務として承っております(60分まで33,000円)。

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