【法改正情報(運送業)】中間点呼や事業用自動車の車内でも遠隔点呼が実施可能になりました

※本ページは。2024年4月14日時点の情報で執筆しております。

2024年3月29日、「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示(令和5年国土交通省告示第266号)の一部を改正する告示が定められ、2024年4月1日より施行されました。

この告示では、貨物自動車運送事業者や旅客自動車運送事業者が、運転者に対して行っている点呼に関して、対面による点呼と同等の効果を有するものとして遠隔点呼業務後自動点呼制度についてのルールを定めています。

2024年4月1日からの遠隔点呼制度

2024年4月1日より開始した新しい遠隔点呼制度では、これまでと比較すると以下の点が大きく変わりました。

  • 中間点呼において遠隔点呼制度が使用可能
  • 点呼を受ける運転者側の施設・環境要件の緩和

中間点呼でも遠隔点呼が実施可能に

はじめに、中間点呼での遠隔点呼制度活用について解説いたします。

告示改正前までは、遠隔点呼は、乗務前点呼と乗務後点呼において記録すべき事項が規定されており、中間点呼に関しての規定はありませんでした。今回の告示改正では、中間点呼において記録すべき事項が規定されました。これにより、中間点呼であっても遠隔点呼が実施可能になりました。

事業用自動車の車内でも遠隔点呼が実施可能に

次に、点呼を受ける運転者側の施設・環境要件の緩和について解説をしていきます。

まずは、改正前と改正後の遠隔点呼の定義を確認しましょう。

改正前

遠隔点呼:運輸規則及び輸送安全規則の規定に基づき、事業者が、機器を用いて、遠隔の営業所又は車庫にいる運転者等に対して行う点呼をいう。

改正後

遠隔点呼:運輸規則及び輸送安全規則の規定に基づき、事業者が、機器を用いて、遠隔地にいる運転者等に対して行う点呼をいう。

改正前は、遠隔の営業所又は車庫にいる運転者に対してのみ遠隔点呼が実施できました。

2024年4月1日より施行された告示では、営業所又は車庫に限らず、遠隔地にいる運転者に対して遠隔点呼を実施できるよう変更が行われています。

遠隔点呼の実施場所は、告示第4条(遠隔点呼の実施)に規定されており、以下のように変更されました。

遠隔点呼は、点呼を行う運行管理者等がいる自社営業所又は自社営業所の車庫と次に掲げるいずれかの場所との間(以下「遠隔点呼実施地点間」という。)において行うことができるものとする。

1 自社営業所又は当該営業所の車庫
2 完全子会社等の営業所又は当該営業所の車庫
3 運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所

第3号の規定より、営業所や車庫以外の場所にいる運転者に対しても遠隔点呼が実施できるようになったのです。

今回の告示改正では、事業用自動車の車内にいる運転者に対して遠隔点呼が実施できるようになったのは、大きな変更だと考えています。

遠隔点呼は、営業所と車庫が同一敷地内になく離れている運送事業者の場合、車庫に遠隔点呼を実施するためのいわゆる点呼場を設置する必要がありました。車庫が市街化調整区域にある場合は、点呼場を設置することは都市計画法違反になるため不可能でした。

車庫が市街化調整区域にある場合は、建物と見做されないトレーラーハウス内に点呼場を設けることができますが、トレーラーハウスはすべての自治体で認められる方法ではありません。市街化調整区域にトレーラーハウスが設置可能な自治体であっても、設置には高額な費用がかかってしまいます。

遠隔点呼が事業用自動車の車内で実施可能になれば、車庫が市街化調整区域にあっても、点呼場の設置が不要になります。

乗務前点呼は日常点検実施後に行う必要がありますが、営業所と車庫が離れている運送事業者の中には、営業所で点呼したあとに日常点検を実施して乗務開始となっているのではないでしょうか。

これが、遠隔点呼が事業用自動車の車内にいる運転者に対して行えれば、乗務前点検のあるべき姿である、日常点検実施後の点呼執行が行えることができ、整備不良に起因する事故を防ぐことができます。

特に近年は、大型車の車輪脱落事故が問題になっています。車輪脱落事故は、日常点検の未実施が原因の一つになっています。遠隔点呼は車輪脱落事故を防ぐ手段になるでしょう。

事業用自動車の車内で遠隔点呼を実施する場合の注意点

事業用自動車の車内にいる運転者に対して遠隔点呼を行う場合は、次の点に留意して運用する必要があります。

  1. 点呼執行者が運転者の状況を随時明瞭に確認できるように、環境照度(明るさ)を確保する
  2. 運転者のなりすましがないかを点呼執行者が確認するための遠隔点呼実施場所への監視カメラの設置義務はなくなったが、運転者がアルコール検知器を使用時の周囲の様子が確認するために、クラウド型ドライブレコーダーやスマートフォンのカメラを使用する
  3. 運行管理者の指示に基づいて点呼を行う観点より、点呼実施場所は、運行管理者と相談者で相談して定めておく。そのうえで、遠隔点呼実施時には、あらかじめ定めた場所で実施されているかを、監視カメラやドライブレコーダー、スマートフォンのGPSなどを使い確認する

通信障害発生時の遠隔点呼の運用

遠隔点呼機器は、通信障害やサーバーダウンにより使用できない場合があります。

通信障害発生時の運用方法は、中間点呼・乗務後点呼と乗務前点呼では。安全性の観点より異なります。

乗務前点呼執行時に遠隔点呼機器が使用できない場合は、安全性の観点より、対面点呼に切り替えるバックアップ体制が必要です。

一方で、中間点呼や乗務後点呼の執行時に通信障害が発生して遠隔点呼機器が使用できない場合は、電話での実施でも構いません。

障害発生時は、運転者が所属する営業所の運行管理者・運行管理補助者のみが点呼執行ができます。

障害により電話でも点呼執行ができない場合は、運転者が、日時・自動車のナンバー・アルコール検知器の測定結果・運行状況を運転者側で記録を残し、通信障害が復旧後、運転者が所属する営業所の運行管理者・運行管理補助者に送付し、営業所ではその記録を、点呼記録と同期間保存してください。

おわりに

運行管理に活用できる情報通信技術の発展は目覚ましく、運行管理高度化の施策の一つである遠隔点呼制度は、自動車運送事業者が使いやすい制度に変更が行われました。

業務後自動点呼とあわせて遠隔制度が普及することで、労働環境の改善、人手不足の解消の一助になり、輸送の安全が確保されることを切に願います。

※本ページは、2024年4月14日時点の情報で執筆しております。

文責:阪本浩毅(行政書士)

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