そのペット送迎、違法では?

我が家には、アメリカンショートヘアーの男の子がおります。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、STAYHOMEが長期化していますが、愛猫の姿に癒されながら過ごす日々が続いております。

我が家の愛猫もペットサロンやペットホテルにお世話になる機会があるのですが、先日、自宅から事務所へ向かっての移動時に、ペットサロンの送迎車がワンちゃんのお迎えに来ていました。

運送業の許認可法務を専門としているため、職業柄、その送迎車のナンバーの色がどうしても気になってしまいます。

その送迎車は軽自動車でしたが、ナンバーの色は黄色でした。

軽自動車の場合、自家用ナンバーは黄色もしくは白色、事業用ナンバーの場合は黒色です。

ちなみに、軽自動車以外の小型自動車、普通自動車の場合は、自家用ナンバーは白色、事業用ナンバーは緑色になります。

そのペットサロンの送迎車は自家用ナンバーでしたので、無料でワンちゃんの送迎を行っているのであれば全く問題ありません。

しかしこれが、飼い主さんに送迎料を請求している場合は、法律に違反していることになります。

ペットの移動に関係する法律

ペットサロン・ペットホテルの送迎やペットタクシー、ペットハイヤー事業のような「ペットの移動」に関係する法律は、貨物自動車運送事業法になります。ペットは法律上では「モノ」に分類される。「貨物」という扱いです。

貨物自動車運送事業の第2条の定義には、次のように記載されています。

貨物自動車運送事業法(抜粋)

(定義)

第二条

2 この法律において「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。

4 この法律において「貨物軽自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいう。

小型自動車・普通自動車を使って、有料で、ペット送迎をする場合は、第2条第2号の「一般貨物自動車運送事業」に該当します。また、軽自動車を使って、有料で、ペット送迎をする場合は、第2条第4号より「貨物軽自動車運送事業」に該当します。

「他人の需要に応じ」とは、飼い主さん(お客様)の依頼でという意味であり、「有償で」とは、送迎に対する対価(送迎料)をお客様に請求するという意味です。

つまり、ペットサロンやペットホテルであっても、自動車を使って、有償(有料)で、ペット送迎を行う場合は、その行為は運送業に該当してしまうのです。

運送業の許認可

運送業を行う場合、国土交通省から何かしらの許認可を取得しなければなりません。

取得すべき許認可は運送業に使用する車両によって異なります。

ペット送迎に小型貨物自動車・普通貨物自動車を使用する場合は、一般貨物自動車運送事業の許可を取得する必要があります。

軽貨物自動車を使用する場合は、貨物軽自動車運送事業の届出を行う必要があります。

運送業の許認可を取得する際のポイント

自動車を使って、有料で、お客様のペットを送迎する場合、運送業の許認可を取得する必要があります。

ペットサロン・ペットホテルの運営事業者が運送業の許認可を取得する際のポイントは3つあります。

一つ目は、送迎車で使用する車両によって取得しなければならない許認可が異なるという点です。

例えば、トヨタのプロボックス・ハイエースのような貨物自動車、日産のNV150AD・NV200バネット・NV350キャラバンのような貨物自動車を送迎車で使用する場合は「一般貨物自動車運送事業」の許可が必要になります。

一方で、ホンダのN-VAN、スズキのエブリィ、ダイハツのハイゼットといった軽貨物自動車を使用する場合は、「貨物軽自動車運送事業」の届出が必要になります。

二つ目は、有料ペット送迎で使用可能な車両は、貨物自動車に限定されるという点です。

有料でペット送迎を行う事業は貨物自動車運送事業に該当してしまうのですが、貨物自動車運送事業において使用できる自動車は貨物自動車、いわゆる商用車に限定されます。

車検証の用途の欄に「貨物」と記載されてる車両がそれです。

車検証に「乗用」と記載されている車両は、構造変更を行って、車検証の用途欄を「乗用」から「貨物」に変更できるのであれば、有料ペット送迎の車両として使用できます。構造変更の可否については、自動車販売店や整備工場に確認してください。

最後は、一般貨物自動車運送事業の許可取得は難易度が非常に高いという点です。

ペットサロン・ペットホテルの運営事業者が、この一般貨物自動車運送事業の許可を取得するのは現実的に無理だと考えます。なぜならば、ペットサロン・ペットホテルとは別に運送会社を起業することになるからです。

一般貨物自動車運送事業の許可取得のためには、送迎車両は最低5台用意する必要あります。さらに、運転者5名・運行管理者・整備管理者を確保しなければなりません。そして、車両と従業員の確保以外にも、様々な条件をクリアーしなければなりません。許可取得後も、他の運送会社と同様の規制を受けることになります。

ペット送迎でどうしても一般貨物自動車運送事業を取得されたい場合は、当法人が執筆している下記HPをご参照ください。許可取得のハードルの高さをご理解頂けるのではと思います。

運送業の新規許可

現実的な解決策

ペット送迎の分野で一般貨物自動車運送事業許可が必要になるのは、ペットタクシー・ペットハイヤーといったペットの移動を専業で行われる事業者に限定されるでしょう。

それでは、ペットサロンやペットホテルの運営事業者が、お客様から送迎料を収受して、合法的にペット送迎を行う方法はないのでしょうか。

私は貨物軽自動車運送事業として行うのが現実的な方法だと考えます。

貨物軽自動車運送事業は、軽貨物車が1台あれば始めることができますし、何よりも届出後の規制が一般貨物自動車運送事業に比べると厳しくないため、ペットサロン・ペットホテルと兼業することが十分可能です。

黒ナンバーのついた送迎車であれば、ペット送迎の際に、お客様へ送迎料を請求しても違法になることはありません。

有償ペット送迎を違法に行った場合の罰則

一般貨物自動車運送事業の許可又は貨物軽自動車運送事業の届出を行わずに、自動車を使って、有料で、ペット送迎を行った場合は、貨物自動車運送事業法違反となり、次のようなペナルティが発生します。

一般貨物自動車運送事業の許可を取得しないで有償ペット送迎を行った場合

3年以下の懲役もしくは300万円以上の罰金刑

貨物軽自動車運送事業の届出を行わないで有償でペット送迎を行った場合

100万円以下の罰金刑

無許可・無届出の状態で有償でペット送迎を行うのは、運送業界では「白トラ行為」と呼ばれる完全な違法行為です。

運送業を無許可・無届出の営業は、同業者やお客様から、国土交通省や警察への通報をきっかけに検挙に繋がることが多いです。

また、ペットの送迎中に交通事故が発生してしまい、お客様の大切なペットに何かあった場合は、今後の事業存続が揺らぎかねない大きなトラブルに繋がります。

お客様の大切なペットを有料で送迎する場合は、必ず事業用ナンバーのついた送迎車を使用してください。

文:阪本浩毅(行政書士)

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