ポストコロナを見据えてのオフィス解約は慎重に。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため在宅勤務(テレワーク)が拡大しました。

想定以上にテレワークが機能し、従業員が出勤するオフィスの必要性が見直されています。

テック系のベンチャー・スタートアップではポストコロナを見据えて都心部にあるオフィスを解約し、本店登記はバーチャルオフィスに移転する動きが出てきています。

安易なオフィス解約にはリスクも

許認可を何も取得されていない事業者は、フルリモートで業務ができるのであればオフィスを解約しても問題なさそうですが、許認可を取得している事業の場合は、そのオフィスの解約は慎重に検討した方がよい場合が多いです。

知人の経営者がオフィスを解約したから、「うちも解約しよう」と安易に追随するのは非常に危険です。

許認可を取得・維持するためには法令で定められている条件をクリアーする必要があります。

この条件は「ヒト」「モノ」「カネ」の3つの要素があると一般的に言われています。

オフィス(事務所)は「モノ」の要件に分類されます。

  • 建設会社の許認可である建設業許可
  • 不動産会社の許認可である宅建業免許
  • 旅行会社の許認可である旅行業登録
  • 古物営業に必要な古物商許可
  • 貨物運送業の許認可である一般貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業
  • 旅客運送業の許認可である一般貸切旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業

上記の許認可には業法の規制があるため、フルリモートで業務ができる場合であっても業法の規制で、物理的なオフィスを廃止することはできません。

上記の許認可以外でも、社会保険労務士さんの管轄ではありますが、労働者派遣事業や有料職業紹介事業でも物理的なオフィスを廃止することはできません。

全ての許認可が物理的なオフィスが廃止できないわけではありませんが、許認可事業を経営する上では、総じて、物理的なオフィスの設置が業法の規制で求められることが多いです。これは行政が事業者を管理監督するためでもあり、消費者を保護するために設けられている規制です。

当法人は、旅行業法務を専門分野としているため、多くのトラベルテック企業の旅行業登録の取得・維持に関与しております。トラベルテック企業との打合せでは「弊社は旅行者との対面取引をしたいのに物理的な営業所を設置しなければならないのか」というのが必ず話題になります。

旅行業は旅行業法という業法の規制を受けます。旅行業法において営業所の「名称」と「所在地」を行政側が把握しているため、従業員がフルリモートで業務を行える場合であっても、物理的なオフィスを完全に廃止することができない業種の一つです。

オフィス廃止の前に許認可の書類をチェック

許認可事業を経営している事業者がオフィス廃止の可否を検討する際は、まずは、許認可取得の際に行政へ提出した申請書類の控えを確認するところから始めましょう。申請書類にオフィスの賃貸借契約書や物件の登記簿謄本、オフィスの外観・内部の写真を添付している場合、その許認可の条件には、「モノ」の条件としてオフィスの設置が要求されている可能性が非常に高いです。

申請書類の控えにこれらの書類が添付されていない場合でも、オフィスを解約しても大丈夫と結論を出すのは危険です。

解約通知を出す前に、取得されている許認可の窓口に確認を行いましょう。この確認は電話でも構いません。行政側がオフィスを廃止しても許認可を維持できるという見解を示したら、そこからオフィスの廃止を具体的に検討しても遅くありません。

ポストコロナ期では、オフィスの解約はしないが通勤や執務室での三密を避けるために、都心部から地方にオフィスを移転されることも増えるでしょう。

都道府県を跨いでオフィスを移転する場合は、許認可を維持する上での注意点がいくつもありますので、オフィス移転については別の機会に解説いたします。

文:阪本浩毅(行政書士)

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