「うちの場合は許可がいるのか」という質問
運送業の許可についてのご相談で、いちばん多いのはこの質問です。トラックを何台も持つ運送会社からの相談ではありません。建設業、製造業、卸売業、リサイクル業など、本業は別にあって、仕事の流れの中で荷物を運ぶ機会がある事業者からの相談です。
結論から言えば、他人の荷物を、お金をもらって、自動車で運ぶなら許可が必要です。ただ、この一文だけでは自分の会社がどちら側にいるのか判断できない、という方がほとんどだと思います。この記事では、線引きの判断軸と、実際に迷われることの多いケースをまとめます。
判断の軸は4つ
貨物自動車運送事業法は、許可の対象となる事業を「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業」と定義しています(第2条)。
この定義を分解すると、判断の軸は次の4つになります。
- 他人の需要に応じて運ぶか(自分の荷物ではなく、他人の荷物か)
- 有償か(運ぶことの対価を受け取っているか)
- 自動車を使うか
- 運ぶものが貨物か
この4つがすべて揃えば、運送業の許可が必要です。
使う車両が軽自動車や125ccを超える二輪車なら、許可ではなく届出になりますが、手続が必要な点は同じです。
逆に、どれか一つでも欠ければ、運送業の許可は不要です。自社の製品を自社のトラックで取引先に届けるのは、1の「他人の需要」が欠けるので不要です。知人の引越を無償で手伝うのは、2の「有償」が欠けるので不要です。
実務で迷いが生じるのは、ほぼ1と2です。3と4で迷うことはまずありません。ですから、自社のケースを考えるときは「運んでいる荷物は誰のものか」「運ぶことに対してお金が動いているか」の2点を見れば、たいてい答えは出ます。
迷いやすいケース
相談の現場で実際に聞かれることの多いケースを、結論とあわせて挙げます。
自社の資材や製品を自社のトラックで運ぶ
許可は不要です。建設業者が現場に資材を運ぶ、製造業者が製品を納品先に届ける、小売業者が商品を顧客に配達する。いずれも自社の荷物を自社の事業のために運んでいるので、「他人の需要に応じて」にあたりません。白ナンバーのトラックで運んで問題ありません。
白ナンバーのダンプで残土や資材を運ぶ
建設現場で使われる白ナンバーのダンプカー(白ダンプ)については、2026年2月10日に国土交通省が建設業者団体あてに事務連絡を出し、許可が不要になる場合の条件を具体的に示しています。背景は、同年4月1日から施行された改正貨物自動車運送事業法で、無許可業者(白トラ)に運送を委託した荷主側にも罰則が及ぶようになったことです。個人事業主の持ち込みダンプが多い建設現場で混乱が起きないよう、従来の考え方を文書で整理したものです。
許可が不要になるのは、次のどちらかにあたり、かつ「自ら運送している」といえる場合です。
- 建設関連会社が自分の所有する貨物を自分で運ぶ場合。土砂販売業者が仕入れた土砂を自社の従業員に運ばせる、といったケースです。
- 他人の貨物であっても、建設関連会社の生業と密接不可分で、その業務に付帯して運ぶ場合。建設工事を請け負った会社が、その工事で出る残土を自社の従業員に運ばせるケースが典型です。ただし、運送を行うのが生業を営む会社自身であること、そして名目を問わず運送の対価としての有償性がないこと、の両方を満たす必要があります。
そして「自ら運送している」と認められるには、運転者が雇用関係にある従業員でなければなりません。日雇いや期間雇用でも構いませんが、形式だけでなく実態で判断されます。労働契約の締結、労働条件通知書の交付、報酬が給与として支払われていること、社会保険への加入、持ち込みダンプなら車両の業務上使用契約の締結、会社の指揮命令下にあること、といった点が判断材料になります。
裏を返せば、一人親方が自分のダンプで複数の現場を回り、運んだ量や回数に応じて「運搬費」を受け取る形は、雇用関係がなく、運送の対価が発生しているので、許可が必要です。
発注する側から見ても、こうした形で運送を頼むと、2026年4月以降は荷主側の違反になりえます。「
建設業だから白ダンプでよい」のではなく、「雇用関係のある従業員に、自社の工事に付帯して、対価なしで運ばせている」場合に限って許可が不要になる、と理解してください。
なお、国土交通省はその後も、1日に複数の事業者の資材を運ぶ場合に誰と雇用契約を結ぶか、といった点について事務連絡を追加しています。詳細は、国土交通省の建設事業Q&A(2026年3月31日時点)と、事務連絡の本文(東京建設業協会掲載)で確認できます。
「運賃」という名目を取らずに、他社の荷物を運ぶ
許可が必要です。他社の荷物を運んで、その対価を「作業料」「手数料」「サービス料」と呼び替えても、運ぶことに対してお金が動いている以上、有償運送であることに変わりはありません。有償かどうかは名目ではなく実態で判断されます。「運賃をもらっていないから大丈夫」という理屈は通りません。
グループ会社や親会社の荷物を運ぶ
許可が必要です。資本関係があっても、法人格が別であれば、相手の荷物は「他人の荷物」です。グループ内の物流を一社に集約して運賃を精算する形は、典型的な有償運送です。運ぶ相手がグループ内に限られているなら特定貨物自動車運送事業という選択肢もありますが、取引先が増える可能性を考えると、実務上は最初から一般貨物自動車運送事業の許可を取る方が多いです。
軽トラックや軽バン、バイクで運ぶ
許可ではなく届出です。軽自動車や、排気量125ccを超える二輪車を使う場合は、貨物軽自動車運送事業として運輸支局への届出で営業できます。排気量125cc以下の原動機付自転車は貨物軽自動車運送事業の対象外ですので、届出は不要です。許可と違って審査期間が短く、要件も緩やかですが、届出なしに営業してよいわけではありません。また、軽自動車と普通トラックを混在させる場合、普通トラックの分は一般貨物の許可が必要です。
自分では運ばず、他社のトラックを手配して運賃を受け取る
貨物利用運送事業の登録または許可が必要です。トラックを持たずに、荷主から運送を引き受けて運送会社に実際の運送を委託する形は、貨物自動車運送事業ではなく貨物利用運送事業法の世界です。トラック輸送だけを使うなら第一種(登録)、トラックと船・鉄道・航空を組み合わせて戸口から戸口まで一貫して引き受けるなら第二種(許可)になります。「うちは運送会社ではなく手配しているだけ」というケースの多くが、ここにあたります。
引越、バイク便、霊柩
いずれも、貨物自動車運送事業法の許可や届出が必要な事業です。引越は一般貨物自動車運送事業の許可、バイク便は貨物軽自動車運送事業の届出、霊柩車による遺体の搬送は一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)の許可が必要です。「トラック運送」のイメージがないため見落とされがちですが、荷物を有償で運ぶ以上、同じ法律の対象です。
産業廃棄物を運ぶ
産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者が、収集や処分とあわせて廃棄物を運ぶ場合は、運送業の許可は不要です。一方、廃棄物を運ぶだけで、収集も処分もしない場合は、運送業の許可が必要です。
この点は長年「廃棄物の運搬に緑ナンバーは要るのか」という形で、産廃業界と運送業界の間で議論されてきました。
2026年4月に改正貨物自動車運送事業法の一部が施行され、無許可業者(いわゆる白トラ)に運送を委託した荷主への規制が始まることを受けて、同年3月16日に国土交通省と環境省がそれぞれ事務連絡を出し、考え方を整理しています。
整理の骨格はこうです。貨物自動車運送事業法は、他人の需要に応じて運送する場合でも、自分の生業と密接不可分で、その業務に付帯して行う運送には許可を求めていません。環境省は、廃棄物処理の主たる業務は「収集」と「処分」であり、運搬はそれを完遂するために付帯する業務だという見解を示しました。これを受けて国土交通省は、廃棄物処理業者が市町村や排出事業者との包括的な委託契約に基づいて、運搬と収集・処分を一体的に実施する場合、その契約の一環として行う運搬は生業に付帯する運送にあたり、許可は不要と解しています。
裏を返せば、許可が不要になるのは「収集や処分とセットになった運搬」に限られます。
収集も処分も伴わず、廃棄物を運ぶ行為だけを請け負うなら、運送業の許可が必要です。具体的には、産廃業者から運搬の部分だけを委託され、排出事業者の現場から中間処理施設まで運ぶ運送会社、中間処理施設から最終処分場までの区間輸送だけを請け負う業者、積替保管施設の間の横持ちだけを行う業者などです。これらは運搬の前後の収集や処分を自分では行っていないので、産廃収集運搬業の許可に加えて、運送業の許可も必要になります。
また、個々の契約が「一体的な実施」にあたるかは、市町村や排出事業者の委託の仕方で変わるため、国土交通省も個別の判断は実態を踏まえて行うよう求めています。
産廃収集運搬業の許可があれば何を運んでも大丈夫、という理解は正確ではありません。
事務連絡の原文は、国土交通省の事務連絡(2026年3月16日)と、東京都環境局の案内ページで確認できます。
許可・登録・届出の整理
有償で貨物を運ぶ事業は、使う車両と事業の形によって、次の5つに分かれます。
| 事業の形 | 根拠法 | 手続 | こういう場合 |
|---|---|---|---|
| 一般貨物自動車運送事業 | 貨物自動車運送事業法 | 許可 | 普通トラックで不特定の荷主の荷物を運ぶ。引越や霊柩も含む |
| 特定貨物自動車運送事業 | 貨物自動車運送事業法 | 許可 | 普通トラックで特定の一社の荷物だけを運ぶ |
| 貨物軽自動車運送事業 | 貨物自動車運送事業法 | 届出 | 軽自動車や二輪車で運ぶ |
| 第一種貨物利用運送事業 | 貨物利用運送事業法 | 登録 | 自社では運ばず、トラック運送会社に委託して運ぶ |
| 第二種貨物利用運送事業 | 貨物利用運送事業法 | 許可 | 船・鉄道・航空とトラックを組み合わせ、戸口から戸口まで一貫して引き受ける |
「許可」「登録」「届出」は、審査の重さと期間が大きく違います。一般貨物の許可は申請から取得まで数か月を要し、役員の法令試験、資金、車庫、運行管理者などの要件を満たす必要があります。一方、貨物軽自動車の届出は書類が整っていれば短期間で済みます。自社がどの区分にあたるかによって、準備の規模がまったく変わります。
許可を取らずに始めた場合
許可なく一般貨物自動車運送事業を営んだ場合、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます(貨物自動車運送事業法第70条)。実際に摘発される例は多くありませんが、事故を起こしたときに発覚する、同業者や元請から通報される、という形で表に出ることがあります。
ただ、実務上もっと現実的な影響は、取引先との関係です。荷主や元請がコンプライアンスを重視するようになり、「緑ナンバーでないと仕事を出せない」「契約更新の条件に許可の有無を入れる」という動きは年々強まっています。これまで白ナンバーで運んでいた仕事が、ある日突然続けられなくなる。許可を取る動機として、罰則よりもこちらの方がはるかに多いのが実情です。
また、無許可で運んでいる間の事故は、事業用の自動車保険の対象になりません。自家用として契約した保険で、業務中に他人の荷物を運んでいた事故が補償されるかは、保険会社の判断次第です。荷物の損害を自社で負担することになれば、罰則より重い結果になりえます。
迷ったときの考え方
自社のケースが許可の対象かどうか迷ったら、「運んでいる荷物は誰のものか」「運ぶことに対してお金が動いているか」の2点に戻ってください。荷物が他人のもので、お金が動いているなら、名目や社内の整理がどうであれ、許可の世界にいます。
許可が必要だと分かった段階で、次に考えるのは「どの区分で、いつまでに取るか」です。一般貨物の許可は、申請の準備から取得まで1年近くかかることも珍しくありません。取引先から緑ナンバーを求められてから動き出すと、間に合わないことがあります。
今の運び方が線のどちら側にあるのか判断に迷う場合は、主たる事務所を管轄する地方運輸局の貨物課に相談してください。
白ダンプや廃棄物の事務連絡でも、個別の判断に迷ったときの窓口として各運輸局の貨物課が案内されています。
実際の運び方と契約の形を伝えれば、許可が必要かどうかの見解を示してくれるでしょう。








