「手数料」でも「コンサル料」でも違法になり得ます──令和7年改正で明確になった行政書士法第19条の「報酬」とは

はじめに

令和7年の通常国会で行政書士法が改正され(令和7年法律第65号)、令和8年1月1日から施行されています。今回の改正には、行政書士の使命・職責の明確化や特定行政書士の業務範囲の拡大などいくつかの柱がありますが、一般の事業者の方にとってもっとも影響が大きいのは、業務制限を定めた法第19条第1項への文言追加かもしれません。

具体的には、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が条文に加わりました。これは新しいルールを作ったというより、これまでも当然そう解釈されてきた考え方を条文上ではっきりさせたものです。

このコラムでは、日本行政書士会連合会が令和8年6月に公表した解説資料をもとに、「報酬を得て」とはどういう意味なのか、どんなケースが違法になり得るのかを、できるだけ分かりやすく整理します。運送業の許可、旅行業の登録、各種届出に関わる事業者の方にこそ、知っておいていただきたい内容です。

どこが変わったのか

改正前後の条文を並べると、次のようになります。

改正前は「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として(中略)業務を行うことができない」とだけ定められていました。改正後は、ここに「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という言葉が加わりました。

ポイントは「いかなる名目によるかを問わず」という部分です。つまり、資格のない人(無資格者)が、他人の依頼を受けて、官公署に提出する書類などを作成し、その対価を「手数料」「コンサルタント料」など、どのような名前で受け取っていたとしても違法になる、ということが条文上はっきりしました。

違反した場合の罰則は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(法第21条の2)。

「報酬を得て」は思っているより広い

多くの方がイメージする「報酬」は、書類1通につきいくら、という形で現金を受け取る場面でしょう。しかし、ここでいう「報酬」はもっと広い概念です。

日行連の資料では、次のように整理されています。

第一に、報酬は現金に限りません。物品の提供を受けることや、接待などの供応を受けることも含まれます。

第二に、依頼者から直接受け取る場合に限りません。第三者から受け取る場合も含まれ得ます。

第三に、書類1通ごとに対価を得ていなくても、その人の行う業務全体として報酬を得ているとみられる場合も該当します。言い換えれば、何らかの形で受け取った金品の全部または一部が、書類作成の対価とみなしうるのであれば「報酬を得て」にあたる、という考え方です。

この「業務全体として見る」という発想は古くからの行政実例にも示されています。たとえば、商工会が会費を徴収し、その会費の目的が会員の建設業更新や経営審査の申請書作成の代価に充てられているとみなされる場合には、別途「書類作成料」を取っていなくても報酬を得ていると解される、とされてきました。

「報酬」に該当する3つの類型

日行連の資料は、違反になり得る対価の受け取り方を3つの類型に整理しています。自社の業務に当てはまるものがないか、確認してみてください。

① 手数料型

顧客に代わって各種申請書・届出書を作成し、顧客からは「書類作成の対価」とは明示せずに、「手数料」「代行料」といった名目で費用を徴収するケースです。

たとえば、ある事業者がお客様の車庫証明や運送関係の届出を代わりに作成し、「事務代行料」として費用をもらっていたとします。「書類作成料」とは書いていなくても、その代行料の中身が書類作成の対価とみなせる以上、「報酬を得て」に該当すると考えられます。

② 本来業務対価一体型

不動産業、各種コンサルタント業、設備・機器の販売や設置を行う事業者、国際業務の代行業などが、自社サービスの一環として申請書類等を作成し、対価としては「仲介手数料」「事務手数料」「コンサルタント料」「設置工事費」「機器売買代金」など、あくまで本来業務に対する名目でのみ金銭を受け取るケースです。

運送・物流の現場でも起こりがちです。たとえばトラックの販売・リースを行う事業者が、車両の納入に合わせて増車の届出書類を作成し、費用は車両代金やリース料に含めるだけで別途は取っていない、という場合。一見すると書類作成では一銭ももらっていないように見えますが、業務全体として報酬を得ているとみられれば、やはり該当し得ます。

旅行業界でも同じことが言えます。旅行会社向けに開業支援や経営指導を行うコンサルティング会社が、サービスの一環として旅行業の新規登録や変更登録の書類を作成し、費用としては「コンサルティング料」「開業サポート料」などの名目でのみ受け取っているケースです。書類作成料という項目が請求書になくても、受け取ったコンサル料の一部が書類作成の対価とみなしうるのであれば、「報酬を得て」に該当すると考えられます。コンサル会社とその担当社員の双方が、法第19条第1項違反として罰せられる可能性があります。

③ 会費(サブスクリプション)型

企業・事業者などで構成される団体が、会員や組合員からの依頼に応じて、あるいはサービスの一環として申請書類等を作成し、会員等からは「会費」「組合費」「顧問料」などの名目で金銭を受け取るケースです。

協同組合や業界団体が、組合費の範囲内で会員の許可更新書類を作成している、といった形態がこれにあたります。書類作成のたびに料金を取っていなくても、会費の目的が書類作成の代価に充てられているとみなせる場合には「報酬を得て」に該当すると解されます。

旅行業界では、旅行業協会が会員の登録更新や変更登録の手続書類を作成し、会員からは年会費の範囲で対応している、という場面が考えられます。旅行業の登録は有効期間が定められ、定期的な更新登録が必要ですし、役員変更や営業所の増設などのたびに変更登録の書類も発生します。協会がこうした書類を会員に代わって作成し、別途の書類作成料は取らずに会費でまかなっている場合でも、その会費が実質的に書類作成の対価に充てられているとみなされれば、「報酬を得て」に該当し得ます。これは前述の商工会が会費で会員の建設業更新書類を作成していた事例と、同じ考え方です。

なお、顧問料やサブスクリプション料、会費などを支払って「利用資格」を得た人にだけ書類作成を行う、という運営形態も、金銭の支払いと書類作成との間に実質的な対価関係が認められれば該当し得る、と整理されています。

法人も罰せられるようになりました

今回の改正では、両罰規定(法第23条の3)も整備されました。

これまでは違反行為をした本人が罰せられるのが基本でしたが、改正後は、法人の従業員等がその法人の業務に関して法第19条第1項などに違反した場合、行為者本人だけでなく、その者を使用している法人にも罰金刑が科されることになりました。

つまり、社員が「よかれと思って」お客様の許認可書類を作成して対価を受け取っていた場合、その社員個人はもちろん、会社そのものが処罰の対象になり得ます。法的な制裁に加え、コンプライアンス違反による信用の失墜という、経営への深刻な悪影響も避けられません。

例外として認められている手続

すべてが一律に禁止されるわけではなく、法第19条のただし書には例外も定められています。

具体的には、他の法律に別段の定めがある場合と、総務省令で定める一定の手続です。後者の例としては、自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)を通じて、新車の車庫証明・新規登録・新規検査などを一般社団法人日本自動車販売協会連合会等が行う手続などが定められています(法施行規則第20条)。

ただし、これらはあくまで法令で明示的に認められた限定的な例外です。「自動車関係なら大丈夫」と一般化できるものではない点に注意が必要です。

事業者の皆さまに押さえていただきたいこと

ここまでを踏まえ、許認可に関わる事業者の方が実務上気をつけたいポイントを整理します。

官公署に提出する書類その他権利義務・事実証明に関する書類の作成は、行政書士の法定独占業務です。たとえ自社の取引やサービスから自然に派生する業務であっても、無資格でこれを代わりに行うことは認められません。所要の書類作成については、お客様自身が行政書士に依頼すべきもの、という整理になります。

その際、行政書士報酬や申請実費をいったん事業者が顧客から預かるような場合には、請求書の摘要を「行政書士への業務委託料」「行政書士申請代行費用」などと明示しておくことが望ましいとされています。書類作成の対価ではなく、行政書士へ支払う費用の立替・取次であることが分かるようにしておく、ということです。

なお、お客様に許認可に精通した行政書士を紹介すること自体は問題ありません。ただし、紹介の見返りとして行政書士に紹介料を求めることは、行政書士倫理との関係で疑義が生じ得るため、避けるべきとされています。行政書士の側でも、紹介を受けたことの対価を依頼者の報酬に上乗せすることは、職務基本規則第15条(不当誘致行為の禁止)に抵触するため行ってはなりません。

おわりに

今回の改正は、「資格のない人が、名目を問わず対価を得て許認可書類を作ってはいけない」という、これまでの考え方をあらためて条文ではっきりさせたものです。そして両罰規定の整備により、会社ぐるみのリスクとして捉える必要が出てきました。

裏を返せば、許認可書類の作成は本来、その分野に精通した行政書士に正面から依頼すべき業務だということです。

行政書士法人シグマは運送・物流や旅行業をはじめとする許認可法務を専門に扱ってきました。「自社で対応してよいのか迷う」「協会や取引先との費用のやり取りをどう整理すればよいか分からない」といった場面でこそ、ご相談いただければと思います。


本コラムは、日本行政書士会連合会「行政書士法第19条第1項の『報酬』の考え方について」(令和8年6月)をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個別の事案については結論が異なる場合がありますので、具体的なご判断は専門家にご相談ください。

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