日本郵便の運送業許可取り消しと、今後のコンプライアンス体制

2025年6月5日、国交省が日本郵便の一般貨物自動車運送業許可を取り消す方針を固めたことがわかりました。

日本郵便の不適切点呼問題、運送事業許可取り消しへ…郵便局のトラックなど2500台対象(讀賣新聞オンライン)」

<記事要約>

日本郵便の運転手への点呼不備問題で、国土交通省はトラック等約2500台の運送事業許可を月内にも取り消す方針です。これは最も重い行政処分で、5年間は再取得できません。

全国郵便局の75%で不備が判明し、国交省の監査では点呼未実施や記録改ざんといった悪質な違反が多数確認されました。「ゆうパック」などへの影響は必至で、日本郵便は子会社への委託増で対応する見込みです。

今後、軽自動車も監査対象となり車両使用停止の可能性があり、4月には酒気帯び運転も20件発覚しています。

日本郵便の問題については2025年の初頭から問題になっており、4月から特別監査が行われていました。これだけの巨大運送会社への取り消し処分という前代未聞の事態に、運送業界を中心に衝撃が広がっています。

現在は貨物軽自動車運送事業についての監査も行われていて、その結果次第ではさらに影響が大きくなることが予想されます。

日本郵便側も対応はなかなか難しい

今回の取り消し処分が直接に影響する範囲は、ゆうパックなどをトラックやワンボックスカーなどの緑ナンバー車両で運ぶ中距離運送で、子会社や協力会社に利用運送事業者として委託していくなどの対策が考えられますが、多くの運送会社がドライバー不足に苦しむ中で、配送遅延などの影響が出るのは避けられないように思います。

さらにこれから軽自動車への監査で車両の使用停止処分など行政処分がくだされれば、ラストワンマイルの輸送にも多大な影響が出ることになります。

LOGISTICS TODAYの記事(日本郵便の貨物運送許可取消へ、国交省方針固める)によれば、

日本郵便内部では、許可制のトラック輸送から届け出制の軽貨物車へのシフトや、車両・人員の子会社への移管などが検討されているとの情報もあるが、国土交通省はこうした動きが事実上の「処分逃れ」とならないよう、厳しく監視する姿勢を示している

とされており、その場しのぎの対応は難しい状況です。

子会社を新設して一般貨物自動車運送業許可を取得するという選択肢もありますが、これだけの規模になると所要資金も莫大な額になりますし、欠格事由の問題が生じる可能性もあり、簡単には進まないかもしれません。

コンプライアンスがより重視される運送業界

今回これだけ甚大な影響が出ることがわかっても、国交省が取り消し処分に踏み切った背景には、あまりにもずさんな日本郵便のコンプライアンス体制があります。

2025年6月4日には、貨物自動車運送事業法の改正案が成立し、5年毎の更新制度など運送業のコンプライアンスを強化する法改正が行われているなかで、最大手である日本郵便に対してこれほど厳しい行政処分が下されたという事実は、国土交通省が今後、業界全体のコンプライアンス遵守を徹底していくという強い意志の表れと言えるでしょう。

この流れは、もはや一部の大企業だけの問題ではありません。

今回の法改正は、すべての一般貨物自動車運送事業者に対し、これまで以上に厳格な法令遵守と、それを担保する社内体制の構築を求めるものです。特に、5年ごとの更新制導入は、事業者が継続的にコンプライアンス体制を維持・改善しているかを定期的にチェックする仕組みであり、付け焼き刃の対策では通用しません。

「知らなかった」「うちは大丈夫だろう」といった甘い認識は、もはや命取りになりかねません。

これを機に、自社のコンプライアンス体制を改めて見直し、社員一人ひとりの意識改革を進めていくことが急務です。具体的には、運行管理体制の再点検、労働時間管理の徹底、運転者や管理者を対象にした定期的な研修の実施、そして何よりも経営トップ自らが率先してコンプライアンス遵守の重要性を社内に浸透させることが不可欠となります。

社会インフラとして重要な役割を担う運送業界全体の信頼を維持し、健全な発展を遂げるためにも、各事業者がコンプライアンス意識を一段と高め、法令遵守を徹底していくことが、今まさに求められていると言えるでしょう。

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